2014年3月21日金曜日

L'Arclassic 第1番
第2楽章 hydeとヴェルディ

クラシック音楽、一口にそう言ってもその中身は多種多様。
作曲家ごとの特徴や年代の違いなどで様々な楽しみ方がありますが、
それを現代において楽しませてくれるのがL’Arc〜en〜Cielです。
クラシックというと“おカタイ”イメージだったり“ヒーリング用”でしかない…
というアナタに、
ラルクメンバーと併せて紹介するクラシックの楽曲に、
温故知新を感じていただきましょう。

L'Arclassic 第1番 目次はこちら
L'Arclassic 第1番 第1楽章: yukihiroとベートーヴェン編 は こちら


第2楽章
hydeの神への皮肉とヴェルディの怒り


ラルクの歌詞の世界において、hydeは神という単語をよく使います。
彼自身、全くの無宗教家であるにも関わらず、
歌詞の世界観のアイコンとして、
はたまた嘲笑の対象として神を用いています。
その最たる例の1つに『Shout at the Devil』があります。
Devil=神とし、「飽きたら氷河期のリセット」など、
神ですら完全な存在ではないのだとひたすら叫び続けています。

かたやクラシックの世界では、
死者を弔う曲としてレクイエム(鎮魂歌)が存在します。
ミサ曲として作られるものが多いのですが、劇場型クラシックの曲も多く、
その多くはラテン語の、同じ歌詞を用いています。
宗教色が強く、神への信仰心が高い曲が殆どなのですが、
中でも異彩を放っているのが、
ジュゼッペ・ヴェルディレクイエム(通称・ヴェルレク)。
椿姫やオテロなど、オペラ作曲で有名なイタリア人作曲家です。

それ故か、曲調はまさに悲劇的オペラ!
けたたましく叫ぶ歌には、
初演時に「絶叫と怒号の連続」だの「死者を叩き起こすレクイエム」だのと
聴衆から揶揄されたほど。
3大レクイエムの1つと言われていますが、
モーツァルトやフォーレのレクイエムの様な粛々とした雰囲気は、
彼の曲にはまるで見当たりません。

その激しい楽曲となった理由に、
ヴェルディの敬愛するイタリア人作曲家ロッシーニと、
同じくイタリア人小説家のマンゾーニの2人の死が原因では、という解釈があります。
2人を失ったショックの大きさが、
20の楽曲で構成されるレクイエムの中でも特に激しい、
あのバトルロワイヤルや旧劇場版エヴァの告知などで知られる、
Dies Irae(ディエス・イレ)に現れていると言っても過言ではありません。
“Dies Irae”とは「怒りの日」という意味。
神の審判が下されるというよりもヴェルディの怒りそのものと言えるでしょう。

 一方、Shout at the Devilですが、こちらはより皮肉色が強い曲です。
「俺が失敗作だと言うのなら貴方は完璧ではない事を認めたらどうだ」と神を挑発し、
例え神に背く事が世に汚れて見えても、真実を振りかざす。
冷たく閉ざされた救いの無い世界から這い上がろうとしています。

そしてヴェルレクを最後に締めくくるLibera meという曲。
ラテン語で「我を救い給え」、直訳してしまえばHelp meなのですが、
とても助けを求めるような曲ではありません。
「さあ救えるものなら救ってみるがいい!!」という絶叫から、
力なく、死者を弔う終結……絶望に満ち溢れ、強烈な皮肉で幕を閉じます。
ヴェルレクにはDies Iraeが複数回登場します。
最も有名で様々な場所で度々使用されるのは、最初のDies Iraeですが、
ぜひこの終結であるLibera meにも着目していただきたいのです。

この曲は故ダイアナ妃が好み、
彼女の葬儀の際にはLibera meがオルガン伴奏によって劇的に演奏されました。
何故このような人がこんなにも早く命を落としてしまうのか、
全世界の行き場のない怒りが教会中に響き渡りました。

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2014年3月21日(金・祝)発行『L'SáGa』創刊号 掲載

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